入浴は苦行の時間。
自分が湯に浸かり、自分が自分の垢を落とし、髪を洗い、流し、乾かすという動作以外ほかに何もできない。終わって何か素晴らしい成果が出るわけでもない。ただただ向き合わなければならない、のろのろと。
湯の中では身体の外側を覆う熱さで身体を温める。しかしすぐに息切れし、苦しくなる。
洗い場ではシャワーの当たらない部位から冷えていくのを感じる。腹が痛いのは冷えのせい。
泡を落としたらもう一度湯に浸かる。冷えた部位が温まるのを感じるが、熱さですぐに内臓が苦しくなる。
身体を拭く。すぐに服を着てはいけない。遅効性の汗が出て服をしっとり濡らし、それが冷えて身体に戻っていくから。
速攻で冷える腹にはタオルを巻いた上から綿の腹巻きで固定する。腹巻きが汗で湿ったときには躊躇なく取り替える。
キビキビ動いてはいけない。汗をかくから。そもそも風呂上がりにキビキビ動けないけれども。
少し身体が冷えたら服を着ても良いが、そこですぐに髪を乾かしてはいけない。ドライヤーの熱で背中や腰から汗が吹き出すから。それがしっとり冷え、濡れた服を着ている気持ち悪さと身体の冷えが内臓も冷やす。
幸せに生きるということは、この苦行の時間をなるべく苦行じゃなくするための工夫をすることである。
例えば熱い湯に浸かり息切れする時間に音楽を聴く。
例えばシャワーの当たらない部位が冷えないように浴室暖房を使う。
香りの良く泡立ちの良い石鹸を使う。
タオルは一回の入浴に何枚何枚も使う。少しでも湿ったタオルは次々交換する。汗が出たそばから拭いて、取り替える。
お風呂上がりにごくごく飲めるように、入浴前にお茶を入れて入浴中に冷ましておく。
このようにタオルを使っているので、五つ星ホテルに泊まりに行ってもタオル、少ないなあ…と思ったりする。